獣医学には献血や輸血の制度がありません。日本の動物病院では、献血可能な動物を飼育し、飼い主に協力を依頼していますが、安定した血液供給の確保が難しく、慢性的な血液不足に陥っています。

 オキシキャリアは、人工赤血球を実用化することで、獣医学における治療選択肢を広げ、必要な治療を受けられる動物の数を増やすことを目指しています。

獣医師からのコメント
動物医療の現場におられる先生方に、輸血の現状と人工製剤(人工赤血球)についてコメントを頂戴いたしました。

森田 肇 先生 
 公益財団法人 日本小動物医療センター

輸血について:
昼間の専門診療では、基本的に供血犬をボランティアで探しています。もしくは、輸血が必要な症例のご家族自身で探していただいています。 夜間救急では原則できないことが多いですが、ご家族の飼育犬などで適応する場合は実施することもあります。
人工製剤について:
夜間救急で緊急的に使用したいときがどうしてもあります。腫瘍破裂や、貧血の増悪による意識レベル低下など。 費用の問題などもあるとは思いますが、それでも心から待ち望んでいたものなので必ず役に立つと思います。

今岡 侑輝 先生 
 今岡動物病院

輸血について:
比較的小規模な動物病院のため、普段からの輸血犬、輸血猫がいない状態となります。 そのため、輸血が必要な場合には、オーナーの同居動物や知り合いにご協力頂くか、スタッフの動物を供血に用いる場合もありますが、これらが困難な場合が多く、当院での輸血という選択肢が取れない場合も多くあります。

人工製剤について:
輸血の機会が多い大規模な動物病院はもちろんですが、供血に苦労することが多い小規模な病院にこそ、利用価値が高いと考えます。人工製剤の輸血に伴う費用にもよりますが、利用可能であるならば、是非とも使用していきたいと思います。

林 文明 先生 
 ノア動物病院城東センター病院

輸血について:
現状は院内の犬猫を主に使用していますが、足りない場合もあり、犬では大型犬の飼い主さんにお願いしたり、猫の場合は運営している猫カフェの猫を使っています。その他それでも適合しない場合があり、飼い主に同居の犬猫などの提供をお願いしたりと、結構供給血液に苦慮しています。

人工製剤について:
アメリカではすでに実用されていると聞きますが、日本への輸入もままならず、国内で生産されるとありがたいです。ただ金額がどれくらいになるか?も気になるところで飼い主の負担が莫大になってしまうと使用に躊躇する可能性もあります。もちろん、期待としては大!大!大!です。

佐藤 隆 先生  
 さとう動物病院

輸血について:
私の病院規模(1獣医師 零細)でも、年に数頭、輸血適応(特に緊急を要す)症例がある中で、直ぐに対応出来ない為に残念な結果となっており、輸血バンクシステム構築、代用血液の開発のニュースにはいつも注視 してきた。

人工製剤について:
過去にも開発の話を耳にしたが実用化ないしは私のような地方、プライマリーケアの動物病院でも実施できるものを期待していた。

岩田 和也 先生   
 いわた動物病院

輸血について:
犬、猫ともに病院で供血動物を飼育することで対応しています。 主に全血輸血をしています。

人工製剤について:
人工赤血球があれば供血動物への負担が減る、安定して輸血できるなどメリットしか感じません。 できれば、猫の輸血頻度のほうが多いので、猫での安全性を確立して臨床応用していただけると嬉しいです。

田部 久雄 先生
 駒沢どうぶつ病院

輸血について:
病院間で供血犬を確保して輸血をしての手術に利用したいが血液型マッチングの問題や供血動物のタイミングで中々活用できていないのが現状。

人工製剤について:
例えば脾臓の血管肉腫の破裂や症状が進んでから来院した子宮蓄膿症手術、IBDなどで貧血がコントロール出来なくなった動物などに使用したい。

田川 道人 先生
 帯広畜産大学 

輸血について:
3頭の実習犬と供血犬ボランティアで賄っていますが、動物愛護の観点や輸血が必要になるタイミングが事前にわからないといったことからなかなか血液を確保できないでいます。またIMHAなどの免疫疾患では輸血適合性が一致しないこともしばしばで、その場合は治療を断念せざるを得ない状況です。

人工製剤について:
実習犬を用意しなくてもいいというのは動物愛護の観点から重要であり、また供血ボランティアの管理や連絡の手間などが大きく削減できると思います。なによりも患者にとって負担の少ない輸血を制限なく実施できるということは大きなメリットだと思います。本来は獣医系大学の研究者が作らなければならないものですし、このような形で新たな治療法の確立を目指していただけることは大変ありがたいです。

斉藤 哲次 先生
 アニマルライフクリニック

輸血について:
輸血が必要な個体は迅速な処置が必要な場合が多く、現在、スタッフの犬猫や飼い主様の同居個体または、お知り合いの個体からの供血に頼っている状況です。しかしながら、供血犬、供血猫を常事飼育すら余裕がないことも実状です。輸血対応症例が一度に来た場合、血液不足になってしまっている現状です。

人工製剤について:
副作用等がなく、保存期間も長く貧血の対応が可能な製剤があれば臨床現場としてはこの上なく、費用的な問題は残りますが、命を繋ぎ止める大きな力となる事は間違いないと思います。

古池 敏英 先生
 フルール動物病院

輸血について:
原則、同居犬猫または、飼い主自身に交渉いただいて同意の得られた親族知人の飼われている犬猫をドナー対象とする。ドナー側犬猫の健康状態、年齢、体重等を勘案し、レシピエント側との交差適合試験をクリアした場合に、供血対象とする。

人工製剤について:
ドナーが確保できない飼い主様にとって大きな朗報になると思う。輸血できないために救うことのできない場面を減らすことができれば、獣医師にとっても非常に心強い画期的なツールになりえる。 なお院内で簡便、長期、大量に保存可能であることが望ましい。また血液型、動物種(主に犬猫)にとらわれない製剤であればなお利便性の高いものとなる。

水井 達也 先生 
 ナラシノ動物愛護病院 

輸血について:
現在飼い主様を中心に血液ドナー協力を募っています(HPにも掲載)が、近年は大型犬を飼育されている方が少なく、 慢性的なドナー不足な状況です。また大型犬がいても高齢になっており輸血したい症例にも対応が追いつかないのが現状です。輸血は緊急症例が多くいつでも手に入り保存の利く人工製剤はまさに神の一滴になることでしょう。 大切なペットを安心して病気から救える治療の一環として人工製剤は待ち遠しい存在ですね。

人工製剤について:
人工と聞くと、大丈夫??って思うところもあります。まだ一度も使用したことが無いのでその安全性や 使用感に疑問も残ります。ただ安全に使用できるレベルの物ならば内科疾患、外科疾患共に利用頻度の高い 素晴らしい商品だと思います。 飼い主のペットへの思いは強く、より安全に早期に治要開始出来るのであれば、使用しない理由は見当たらないと思います。年間約1.500症例の手術のうち輸血を本当はしながら実施したい症例も多く、また内科疾患についても輸血が間に合わなくて無くなるペットもいます。そういった助けられたはずの命を救うことの出来る人工製剤に期待しております。