
ヘモグロビン(hemoglobin、Hb)は、ヒトを初めとする脊椎動物の血液において酸素の運搬の役割を担っているタンパク質です。血液中の赤血球の中にあり、鉄を有するヘムと呼ばれる赤色素を結合しています。このヘムが酸素のたくさんあるところ(肺)では酸素と結合し、酸素が少なく二酸化炭素が多いところ(末梢組織)では酸素を放出することで、体内で効率よく肺から全身に酸素を運んでいます。
Hbの構造は、αサブユニットとβサブユニットと呼ばれる2種類のたんぱく質が各々2個ずつ組み合わさっています。それぞれのサブユニットにヘムが結合していますが、このヘムは周りの温度が高くなると不安定になり壊れてしま〈い〉ます。弊社の技術では、ヘムを安定化した後に加熱して殺菌することを可能にしました。
哺乳類動物のHbは、種の間で高い共通性を持っています。ヒトとウシ、イヌとウシのHbのアミノ酸配列は、それぞれ80%以上が同じです。当社の人工赤血球はHbを脂質膜で包んでいるため、種の異なるヘモグロビンを使う(例えば、ウシのHbから作製した人工赤血球をイヌに供する)ことによる免疫拒絶反応はありませんが、仮に血中で脂質膜が破れてウシHbが漏れ出たとしても免疫拒絶反応が起きにくいと考えられます。
血液から赤血球を分離し、赤血球の膜を破壊することで、Hbを取り出すことができます。取り出したHbを精製し、さらに殺菌した後に、これをリポソームで包むことで、人工赤血球は作られます。